ベトナム漆芸 ソンマイ -研ぎ出すたび、物語が現れる-

ソンマイ漆芸家ファム・チー・チュン氏のアトリエと作品

Sơn Mài · Vietnam · ベトナム漆芸

ベトナム漆芸
ソンマイ

Sơn Mài — The Art of Revealing

研ぎ出すたび、物語が現れる

Wancher · 2026

漆を塗り重ね、研ぎ出すたびに物語が現れる——それがベトナム伝統漆芸「ソンマイ」の本質です。50年以上にわたりソンマイ画家として活躍するファム・チー・チュン氏の世界と、Wancherが万年筆という日常の道具に宿した美をご紹介します。

漆のはじまり — 東アジアの共通遺産

天然の塗料である漆は、数千年にわたり東アジアを中心に受け継がれ、各地で独自の発展を遂げてきました。日本では約9,000年前の縄文時代の遺跡から漆器が発見されており、当時すでに高度な漆工技術が存在していたことが知られています。

一方、ベトナムでは約2,500年前、北部の紅河流域で栄えたドンソン文化の時代に漆工芸が発展したと考えられています。ドンソン文化は、中国文化の影響を受けながら青銅器や鉄器の製作技術が大きく発展した時代であり、その優れた工芸技術は漆芸にも受け継がれていきました。

9,000年
日本の漆工技術の歴史
(縄文時代)
2,500年
ベトナム漆芸の起源
(ドンソン文化)

ベトナムの漆 — 日本との違い

ひとくちに「漆」といっても、その性質は産地によって大きく異なります。日本で採取される漆は「ウルシオール」を豊富に含み、なめらかで流動性のある樹液が特徴です。

一方、ベトナムで採取される漆は日本産に比べてウルシオールの含有量が少なく、粘りが強いため硬化に時間を要します。この漆ならではの性質を活かして発展したのが、ベトナム独自の漆芸「ソンマイ(Sơn Mài)」です。

特徴日本の漆ベトナムの漆
主成分ウルシオール(高含有)ウルシオール(低含有)
質感なめらか・流動性高粘り強い
硬化速度比較的早い時間を要する
代表技法蒔絵・根来塗などソンマイ(Sơn Mài)

ソンマイとは何か

ソンマイ(Sơn Mài)は、ベトナムを代表する伝統漆芸です。「ソン(Sơn)」は漆、「マイ(Mài)」は研ぐことを意味し、その名の通り幾重にも塗り重ねた漆を丁寧に研ぎ出すことで、美しい模様や色彩を浮かび上がらせる技法です。

日本の蒔絵が漆の表面に金粉や絵柄を加えて仕上げるのに対し、ソンマイでは漆の層の間に卵殻、貝殻(マザーオブパール)、金箔、銀箔などの素材を重ね、何度も塗りと研磨を繰り返すことで、奥行きのある表現を生み出します。

ファム・チー・チュン氏のソンマイ絵画 — 女性と自然を描いた卵殻・漆の作品
ファム・チー・チュン氏の作品。卵殻の白と漆の深い艶が織りなす、ソンマイならではの表情。

「研ぎ進めるたびに異なる層が姿を現す。
完成するまで、最終的な表情を見ることはできない」

— ソンマイの哲学

制作には数か月を要することも珍しくなく、一つひとつの工程を熟練の職人が手作業で行います。こうして生み出されるソンマイは、漆特有の深い艶と、幾層にも重なる色彩や素材が織りなす豊かな奥行きを兼ね備えています。

職人 ファム・チー・チュン氏

ソンマイ漆芸家ファム・チー・チュン氏が制作中の万年筆軸を前にアトリエに座る
Son Mai Artist · ソンマイ画家
ファム・チー・チュン
Pham Chinh Trung

ソンマイ画家として50年以上活躍。自然や人物の美しさからインスピレーションを受け、卵殻・貝殻・金箔を用いた独自の世界観を作品に込める。WancherのSơn Mài万年筆コレクションを手掛ける唯一の職人。

制作ドキュメンタリー
ファム・チー・チュン氏のソンマイ制作ドキュメンタリー

▲ ファム・チー・チュン氏の作品作りを追ったドキュメンタリー映像(YouTube)

ソンマイの制作工程

ソンマイは、一朝一夕で完成する工芸ではありません。完成までには数か月を要することもあり、数多くの工程を経て一点ずつ丁寧に仕上げられます。

ソンマイの下地材料 — 漆の層の断面と各種顔料が入った器
制作の土台となる下地材料。各工程で使われる漆と顔料は、すべて職人が手で管理する。
1
下地づくり

木地に布や漆を重ねながら、何度も乾燥と研磨を繰り返し、丈夫で滑らかな下地を作ります。この工程が作品全体の品質を左右する重要な土台となります。

2
漆の塗り重ね

天然漆を幾重にも塗り重ね、その都度乾燥させます。ベトナム産の漆は硬化に時間がかかるため、一つひとつの工程に十分な時間をかけながら美しい漆の層を形成します。

3
装飾の埋め込み

卵殻やマザーオブパール、金箔、銀箔などを一つひとつ手作業で配置します。完成後に見える部分まで計算しながら丁寧に埋め込まれていきます。

4
研ぎ出し(最重要工程)

漆をさらに重ねた後、職人が表面を少しずつ研ぎ出すことで、漆の層の中に埋め込まれた装飾が姿を現します。削りすぎれば模様は失われ、足りなければ美しさは引き出せない——長年の経験と感覚が求められる工程です。

5
仕上げ・艶出し

最後に細かな研磨と艶出しを行い、漆本来の深い光沢と、幾重にも重なる色彩や素材の奥行きを引き出します。

ソンマイ制作に使われる各種ヘラ・道具が青いマットの上に並ぶ
職人が長年かけて手に馴染ませてきた道具たち。それぞれの刃の形が、異なる表現を生む。

Wancherの万年筆へ

Wancherでは、この伝統技法を万年筆という日常の道具へと昇華しました。書くたびに感じる漆の深い艶、角度によって変わる卵殻と貝殻の輝き——ソンマイは、使うたびに新たな表情を見せてくれます。

見る角度や光の当たり方によって表情を変えるソンマイは、漆・卵殻・貝殻・金銀箔が織りなす唯一無二の美しさを生み出します。その独特の美しさは、ベトナムを象徴する工芸として世界中で高く評価されており、Wancherはその伝統を万年筆というかたちで、あなたの手元に届けます。

「見る角度や光の当たり方によって
表情を変える——それがソンマイの万年筆です」

— Wancher

Sơn Mài Collection

ファム・チー・チュン氏が手掛けた
ソンマイ万年筆

50年以上の経験を持つ漆芸家の手から生まれた、唯一無二の一本。書くたびに、ベトナムの伝統が息づきます。

コレクションを見る →
ソンマイ Son Mài ベトナム漆 漆芸 ファム・チー・チュン 万年筆 伝統工芸 Wancher 卵殻漆芸
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Wancher チーム
Vietnam · ベトナム漆芸コレクション

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