ベトナム漆芸
ソンマイ
Sơn Mài — The Art of Revealing
研ぎ出すたび、物語が現れる
漆を塗り重ね、研ぎ出すたびに物語が現れる——それがベトナム伝統漆芸「ソンマイ」の本質です。50年以上にわたりソンマイ画家として活躍するファム・チー・チュン氏の世界と、Wancherが万年筆という日常の道具に宿した美をご紹介します。
漆のはじまり — 東アジアの共通遺産
天然の塗料である漆は、数千年にわたり東アジアを中心に受け継がれ、各地で独自の発展を遂げてきました。日本では約9,000年前の縄文時代の遺跡から漆器が発見されており、当時すでに高度な漆工技術が存在していたことが知られています。
一方、ベトナムでは約2,500年前、北部の紅河流域で栄えたドンソン文化の時代に漆工芸が発展したと考えられています。ドンソン文化は、中国文化の影響を受けながら青銅器や鉄器の製作技術が大きく発展した時代であり、その優れた工芸技術は漆芸にも受け継がれていきました。
(縄文時代)
(ドンソン文化)
ベトナムの漆 — 日本との違い
ひとくちに「漆」といっても、その性質は産地によって大きく異なります。日本で採取される漆は「ウルシオール」を豊富に含み、なめらかで流動性のある樹液が特徴です。
一方、ベトナムで採取される漆は日本産に比べてウルシオールの含有量が少なく、粘りが強いため硬化に時間を要します。この漆ならではの性質を活かして発展したのが、ベトナム独自の漆芸「ソンマイ(Sơn Mài)」です。
ソンマイとは何か
ソンマイ(Sơn Mài)は、ベトナムを代表する伝統漆芸です。「ソン(Sơn)」は漆、「マイ(Mài)」は研ぐことを意味し、その名の通り幾重にも塗り重ねた漆を丁寧に研ぎ出すことで、美しい模様や色彩を浮かび上がらせる技法です。
日本の蒔絵が漆の表面に金粉や絵柄を加えて仕上げるのに対し、ソンマイでは漆の層の間に卵殻、貝殻(マザーオブパール)、金箔、銀箔などの素材を重ね、何度も塗りと研磨を繰り返すことで、奥行きのある表現を生み出します。
「研ぎ進めるたびに異なる層が姿を現す。
完成するまで、最終的な表情を見ることはできない」
制作には数か月を要することも珍しくなく、一つひとつの工程を熟練の職人が手作業で行います。こうして生み出されるソンマイは、漆特有の深い艶と、幾層にも重なる色彩や素材が織りなす豊かな奥行きを兼ね備えています。
職人 ファム・チー・チュン氏
ソンマイ画家として50年以上活躍。自然や人物の美しさからインスピレーションを受け、卵殻・貝殻・金箔を用いた独自の世界観を作品に込める。WancherのSơn Mài万年筆コレクションを手掛ける唯一の職人。
ソンマイの制作工程
ソンマイは、一朝一夕で完成する工芸ではありません。完成までには数か月を要することもあり、数多くの工程を経て一点ずつ丁寧に仕上げられます。
木地に布や漆を重ねながら、何度も乾燥と研磨を繰り返し、丈夫で滑らかな下地を作ります。この工程が作品全体の品質を左右する重要な土台となります。
天然漆を幾重にも塗り重ね、その都度乾燥させます。ベトナム産の漆は硬化に時間がかかるため、一つひとつの工程に十分な時間をかけながら美しい漆の層を形成します。
卵殻やマザーオブパール、金箔、銀箔などを一つひとつ手作業で配置します。完成後に見える部分まで計算しながら丁寧に埋め込まれていきます。
漆をさらに重ねた後、職人が表面を少しずつ研ぎ出すことで、漆の層の中に埋め込まれた装飾が姿を現します。削りすぎれば模様は失われ、足りなければ美しさは引き出せない——長年の経験と感覚が求められる工程です。
最後に細かな研磨と艶出しを行い、漆本来の深い光沢と、幾重にも重なる色彩や素材の奥行きを引き出します。
Wancherの万年筆へ
Wancherでは、この伝統技法を万年筆という日常の道具へと昇華しました。書くたびに感じる漆の深い艶、角度によって変わる卵殻と貝殻の輝き——ソンマイは、使うたびに新たな表情を見せてくれます。
見る角度や光の当たり方によって表情を変えるソンマイは、漆・卵殻・貝殻・金銀箔が織りなす唯一無二の美しさを生み出します。その独特の美しさは、ベトナムを象徴する工芸として世界中で高く評価されており、Wancherはその伝統を万年筆というかたちで、あなたの手元に届けます。
「見る角度や光の当たり方によって
表情を変える——それがソンマイの万年筆です」
Sơn Mài Collection
ファム・チー・チュン氏が手掛けた
ソンマイ万年筆
50年以上の経験を持つ漆芸家の手から生まれた、唯一無二の一本。書くたびに、ベトナムの伝統が息づきます。
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