ドリームペン京都漆・古都色 (こといろ)
静謐なる気品を宿す
歴史に磨かれた京都の美しい風景が京蒔絵師島本恵未の漆塗りで万年筆になりました。雅やかな京漆器の色漆塗り技術に華やかな金箔蒔絵を散らしながらも、京漆器特有の「詫び」「寂び」を取り入れた優美な世界を表現しています。その静謐なる気品を宿した万年筆「京都漆 古都色 (こといろ)」をご紹介します。
日本語で最上位の美しさを意味する「麗しい(うるわしい)」が語源の漆は、日本各地にあります。なかでも1200年もの歴史を持つ京漆器は、デザインの美しさ、堅牢さ、耐久性など、どれをとっても群を抜いています。特に日本人独特の感性である「詫び」「寂び」を漆器で表現しているのが京漆器です。
今回、ワンチャーは「詫び」「寂び」の美しさを万年筆で表現できないかと考えました。そこでドリームペン古都色の製品開発をするにあたってタッグを組んだ作家が、京蒔絵師であり京漆器の漆芸家でもある島本恵未だったのです。
詫び寂びの深い味わい
794(延暦13)年に遷都されて以来、歴史に揉まれ文化をはぐくんできた京都。千年の都とも称される京都で作られ続けて来た京漆器には、他の産地製品には見られない「詫び」「寂び」の深い味わいが秘められています。千利休に代表される「詫び」「寂び」を漆器で表現した京漆器は、特に高級品の分野において他の追随を許さない品質を誇ります。
京都の歴史文化と京漆器
794(延暦13)年に始まる京漆器はその技法を受け継いだ職人たちによって京都で脈々と作られて来た漆器です。薄く繊細な木地が特徴で、茶道具、祝儀調度品のほか、箪笥や飾り棚などの家具や食器も作られてきました。京漆器は見た目の美しさだけではなく、丈夫さの面でも優れています。なぜなら漆は本来、すぐれた接着力を持っているからです。京漆器の場合、ほかの漆器のように下地の工程で米糊などを使うことはありません。漆本来の接着力を引き出すために漆の割合を多くした木地を使うため、堅牢性の高い漆器が出来上がります。ただし漆の割合が多い分、コストも手間もかかります。
古都色
京都の優美な自然と日本の伝統美をイメージした色漆に華やかな金箔を散らし、静謐なる気品を表現した万年筆です。今回は第一弾として「京都桜(桜色)」「伏見稲荷大社(朱色)」「平等院(赤色)」の3色をご用意しています。
京都桜 桜色
秀吉が愛した醍醐寺の桜をはじめ清水寺の桜、御室(仁和寺)の桜と、京都には桜の名所が数多くあります。名所に咲き誇る桜のあえかな表情を万年筆のボディに色漆で再現しました。
伏見稲荷大社 朱色
千本鳥居で有名な伏見稲荷大社は1300年もの間、人々の信仰を集めている神社です。鮮やかな朱塗りの本殿は1499年造営の国指定重要文化財です。ドリームペン京都漆塗古都色は、本殿にも、鳥居にも使われている朱色を色漆でボディに施しました。
平等院 赤色
世界遺産であり国宝でもある平等院は、1052年に関白藤原頼道が極楽浄土に憧れ、建立した鳳凰堂を中心とする寺院です。平安時代の顔料「丹土(につち)」を再現した平等院の赤を色漆で万年筆のボディに写し取りました。
金閣寺 黄土色
金閣寺は室町幕府三代将軍足利義満ゆかりの寺です。正式名称・北山鹿苑寺。金箔貼りの舎利殿「金閣」が有名なため「金閣寺」と呼ばれています。極楽浄土をこの世に現したといわれる金閣寺の風情を万年筆で表現しています。
嵐山の竹 緑色
「竹林の小径」と呼ばれる約400mの竹林道が嵐山にあります。竹と竹の間から差し込む、幻想的な木漏れ日に煌めく緑を万年筆のボディに表しています。
京漆器の6つの製作工程
1.木地作り
通常はヒノキなど木材を加工したものを指しますが、ここでは万年筆のベースとなるエボナイトを研磨します。
2.漆塗りの下地作り
6つの工程「刻苧(こくそ)」「木地固め(きじかため)」「布着せ(ぬのきせ)」「地付け(じつけ)」「くくり錆(くくりさび)」「錆付け(さびつけ)」で、しっかり下地を施すことで痩せを防ぎます。
3.漆塗りの下地研ぎ(したじとぎ)、中研ぎ(なかとぎ)
下地の工程が終わった表面は、ざらざらしています。水と砥石を使ってツルツルに仕上げる工程が、下地研ぎです。1日以上乾燥させたら、今度は炭を使って滑らかに仕上げる「中研ぎ」を行い、本工程は完了です。
4.上塗り(うわぬり)
上塗りで使う漆は、濾し紙(こしがみ)を使ってゴミを取り除いたものを使います。なお、京漆器で使う濾し紙(こしがみ)は吉野紙です。
5.節上げ
表面に付着したほこりを除去する工程です。ほこりを除去する際には、鳥の羽軸の先を使い、丁寧に取り除いていきます。
6.蝋色仕上げ(ろいろしあげ)
漆器特有の、つややかな表面を作る工程です。手で丁寧に磨き上げます。
加飾とは、漆器に装飾を加える工程です。大きく分けて、「蒔絵(まきえ)」、「螺鈿(らでん)」、「青貝(あおがい)」の3つの技法があります。 ※ドリームペン古都色には、金箔を優雅に散らした金箔貼りが施されています。
京蒔絵師・漆芸家島本恵未
1988年和歌山市生まれ。京都精華大学に進学した島本恵未は選択した蒔絵の授業で「絵がそのまま道具になっている」と感動し、蒔絵師を志しました。卒業後は京都産業技術塗研究所基礎漆工コースで学び、修了の年に和歌山県美術展覧会工芸部門最優秀賞を受賞します。
2014年に漆芸工房「表望堂」を立ち上げ、2016年の三井ホーム「禅の家」プロジェクトへの参画をはじめとしてアクティブに活動している京蒔絵師であり、漆芸家です。
表望堂
伝統工芸品から建築の内装、最新のプロジェクトまで手がける京都で漆芸の技をおさめた職人の工房です。自然の漆を使った製品を数多く生み出しています。