ソンマイ - ベトナムの珠玉
これまでご紹介してきたソンマイ万年筆はベトナムの自然、風景や動植物をモチーフにしたデザインでしたが、今作では地球の奥深くに眠る美しい鉱物に焦点を当てました。 古来よりダイヤモンドや、ルビー、エメラルドといった貴石は世界中で珍重され、ベトナムの各王朝においても文化や権威として重要な存在でした。李朝時代の青銅や貝殻をベースにした装身具からグエン朝時代の宝石で飾られた貴金属まで時代ごとに大切にされてきました。 ベトナム文化における宝石の価値からこの"ベトナムの珠玉"コレクションは生まれました。 制作を手掛けるのはソンマイ画家のファム チー チュン氏で、時代を超えた美しさを体現するため、これまでのソンマイ作品にはなかったユニークな仕上がりになりました。
宝石にインスパイアされて
万年筆を手にしたときに軸の中から見えるインクの揺らめき。 ベトナムの珠玉コレクションでは、ABS樹脂製の透明軸をベースに透明感のある宝石のような美しい世界観を表現しています。
ベトナムはルビーの産地のひとつとして挙げられます。宝石の町として知られるルックイェンではルビーが採掘されており、なかでもスタールビーは貴重で人気が高いです。 ベトナム文化において、ルビーは幸運、勝利の象徴として重要視されてきました。宝石の美しさには色や透明度が求められますが、スタールビーのようにインクルージョンがもたらす特別な美しさもあります。ルビーのような万年筆に配置された卵殻はスタールビーのシルクインクルージョンのように魅力的な仕上がりです。
琥珀やルビーとは異なりエメラルドはまだベトナムでは発見されていませんが、バックカン省のバベー県の地下にはエメラルドが眠っている可能性が示唆されています。 この未発見のエメラルドの可能性へ期待を込めて"エメラルド"と名付けました。エメラルドを覆う卵殻は研磨前の原石、つまり地層に眠っている母岩そのものを表しています。
真珠の産地として知られるフーコック島ですが、実は2020年に琥珀が発見されました。 アンバー(琥珀)という名前の通り、軸色は透明感のある赤みがかったオレンジ色です。このペンに施された卵殻はフーコック島を囲う白い砂浜や岩肌を表現しており、琥珀色の輝きがより際立ちます。
ベトナムの漆”Son Ta”と卵殻技法
SƠN TA(ソンタ)とはベトナムで使われる絵の具の一種で、主に漆絵の材料として用いられます。 ベトナムの漆はハゼノキから採取されますが、生漆自体は半透明なのでソンタで彩色をして絵を描きます。 しかし、ソンタには白色がありません。そのためベトナムの漆絵では卵の殻を嵌めこんだり、貼り付けたりして白を表現します。 小さくカットした殻を一枚一枚配置して仕上げることは高い技術力とセンスが必要とされます。
ソンマイ画家、ファム チー チュン氏について
ファム チー チュン氏は50年以上、ソンマイに携わり作品を生みだした偉大な画家です。彼のソンマイ絵画は多くの場所で展示されています。 "ビジネス・インサイダー"ではソンマイ絵画に関する彼のインタビューが取り上げられています。詳しくはこちら。